KEYNOTE 01 持続可能な地域のつくり方〜地方創生実現のためのSDGsアプローチ〜

KEYNOTE 01 持続可能な地域のつくり方〜地方創生実現のためのSDGsアプローチ〜

本記事は、issue+design代表筧裕介が日経グローカル(日本経済新聞社で連載している「持続可能な地域のつくり方 : 地方創生実現のためのSDGsアプローチ」のオリジナル原稿となります。なお、日経グローカル本誌とは一部異なる部分があります。予めご了承ください。

なぜ日本の地域づくりはうまくいかなのか

 

地域活性化は日本の長年の政策課題である。しかし、大都市圏への人口集中傾向は一貫として続いており、成果があがっているとは言いがたい。私自身、色々な地域での活動を通じて、「なぜ地域づくりはうまくいかないのか?」という自問を繰り返してきた。そこで見えた結論が「工学的アプローチの限界」である。
工学的アプローチとは、要素分解と個別対処のアプローチである。

例えば、テレビが映らないとする。この問題に対処する場合、原因を要素に分解して考える。それはリモコンの故障かもしれない。電源コードの接続不良かもしれない。

原因を特定し、その部分に対処できれば、問題は解決する。

地域に対しても同様のアプローチがとられる。

人口減少と産業衰退の原因を「若者の絶対数の不足」という問題に特定する。その対処策として、移住・定住支援に予算が割かれ、多くの自治体が取り組み始める。その結果、金銭的インセンティブに惹かれて一時的に移住者が増えることはあるだろう。ただ、これではこの問題は解決しない。移住者を受け容れる風土や仕事がなければ、すぐに去ってしまう。地元の人と結婚・出産まで至れば大きな成果に見えるが、保育や教育の環境が整っていなければ、子どもの成長とともに転居してしまう。

地域が抱える課題は、テレビを修理するようにシンプルな要素分解と個別対処では解決できない。

なぜなら、地域は「生きている」からである。

 

「人と経済の豊かな生態系」が根づいた地域

 

自然界の全ての種は食うもの食われるものの食物連鎖に組み込まれ、相互に影響しあっている。個別種に加えて、それを支配している気象、土壌、地形などを含めたものを生態系と呼ぶ。

地域を舞台にした人間の生活や経済活動も、住民、事業者、観光客などの人間、企業・行政機関などの組織、気候・地形・動植物などの自然環境の相互作用による生態系の基に成り立っている。森・海の自然の恵みを活かした仕事で稼ぎ、住民同士が繋がり助けあう。豊かなコミュニティのもとで次の世代が確実に育つ。

持続可能な地域とは、そんな「人と経済の生態系」が存在する地域なのだ 。
この地域を持続可能に足らしめている生態系が崩壊の危機に瀕している。
そして、生態系を再生するための方法論がSDGsなのである。

 

地域に必要なSDGsアプローチ

ここでは、SDGsの詳細な説明は避けるが、1つだけ知っておいて欲しいSDGsの最も大切なコンセプトが「包括性とパートナーシップ」である。

SDGsの目標は便宜的に17に分かれているが、17ゴールはそれぞれ独立して存在しているものではない。互いに密接に関連している。

 

ゴール同士の関係性を理解するには、アフリカのチャド湖事例がわかりやすい。

 

 

この湖は温暖化・砂漠化の影響で水位が下がり、豊かな水の恩恵を受け農業や漁業に従事していた多くの住民が、仕事を失い、大都市へと移り住んだ。
大都市には貧困層が増えた結果、都市でのつながりが希薄で貧しい生活を送る多くの若者がイスラム過激派組織の勧誘を受け、テロ活動へと加わり、世界各地でテロ行為が急激する一因となったのだ。

気候変動と世界平和、誰もが知っていて一見無関係な2つの問題が実は根っこではつながっているのだ。

 

 

住民個人の最適と地域みんなの最適を両立する

 

例えば、ある地域で海洋レジャー建設の話があがったとしよう。
世界中から観光客を呼び込み地域経済を活性化する可能性がある。しかし、海の汚染や廃棄物も危惧される。この状況に対して2つのアプローチとシナリオが考えられる。

1つは分断シナリオである。
海洋レジャー事業者が、漁業関係者が、地元商店・ホテルが、それぞれが自分の利益達成を優先する行動をとるシナリオだ。

このシナリオでは、たいてい互いの利害関係が衝突し、誰かが利益を得たら、誰かが不利益を被る。海洋レジャー事業者の利益を最大化する開発が行われ、観光客は地域に増える。しかし、海が汚染され、漁業の衰退が進む。施設内で食事や買い物が完結し、レジャー事業者だけが儲かり、住民からは反発の声が上がる。当然地元の協力は得られず、人材の採用も地元産の魚介類の提供もできなくなる。こうした負の影響の積み重ねは、レジャー施設の魅力を損ない、次第に競争力を失い、他地域との競争に破れる。地域には、古びた施設と汚れた海が残り、ますます衰退が進む。そんなシナリオだ。

 

 

個別の目標達成を優先させた分断の状況は、地域全体に、そして当初は勝者であった側にすら負の影響をもたらすのだ。

もう1つが協働シナリオである。
関係者が対話し、地域全体が目指す姿、各自の生活や事業の目的を共有し、ともに達成することを目指して協働する。
ごみゼロ、クリーンエネルギーで生態系への影響が少ない小規模リゾートを開発し、地元産の食材を活用した料理を振る舞う。
住民と協働した観光コンテンツを開発・運営する。環境共生型レジャーとして評価が高まり、地域に新たな雇用も生まれる。

 

 

結果的に、地域全体が活性化し、みんなが利益を得る。そんな理想的なシナリオだ。

17ゴールは全てつながっている。1つのゴールを達成するためには、他とのつながりを考えなければならない。
あるゴール達成のための自分の行動が他者のゴールを阻害することもあれば、逆に他の複数のゴールに好影響を与えることもある。

地域に存在する問題の大半はプレイヤー間、課題間の分断にある。行政と民間などの立場の分断、若年層とシニアの世代の分断、商・農・観光など分野の分断、様々な分断、

すなわち人と経済の生態系の崩壊により、
多くの問題が負の連鎖を引き起こす「分断シナリオ」を辿っているのだ。

本連載では、様々な領域で起きている「分断」を乗り越え、対話と協働により、「人と経済の豊かな生態系」が息づいた「持続可能な地域」の実現のための提言をこれから行っていきたい。

 

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次の連載もお楽しみに。

 

書籍情報

持続可能な地域のつくり方(英治出版)

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